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イラン旅行記 6 - マリファナ

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 イランは治安が良かった。

 人も良かった。

 道行く人が声をかけてきて、たまに家に泊めてくれたり。旅行者を歓迎することに喜びを感じるイスラム圏の思考回路なのかもしれない。それがウェットな部分を大いに含んでいて、独りで旅行するのが好きなめんどくさい種類の人間にとっては胃もたれすることもある。

 考えてみれば、アジア圏はウェットな傾向がある。

 一昔前の日本と同じだ。同調性に喜びを感じるもの。同じ飯を食べて、同じものを見て楽しむ事こそが親愛の印となる思考方法。

 これを僕は個人的に『俺の酒が飲めないのか』文化と呼ぶことにしている。勿論、そんな言葉はない。ここでそう呼ぶのは、便宜上。あくまで便宜上。

 飯を奢ってくれて、泊めてくれて、人格的にも尊敬し始めた人から受ける「俺の酒が飲めないのか?」

 これは断れないですよね。

 断れないのはそれは弱さなのだろうか? まあ、弱さと呼ばれるものの一種類であることは間違いないと思う。その場の親和的な関係性を壊すことを恐れるための逃げではあるのだろう。

 まあ、大抵の場合はオッケーとする。危険は避けるべきなのだ。たとえプライドとか色んなモノが地に落ちようが。そんなものは元から大したものじゃない。

 ただ「俺のマリファナが吸えないのか?」

 になったときは困った。

 まさか、厳格なイランでこれがあるとは思わなかった。

 日本における「イラン人」のイメージは上野や新宿で覚せい剤とかを売りつけるイメージが昨今のニュースのせいであるのは事実。が、まあ、それもそれでほんの一部の話なので、善良な大多数の在日イラン人の方たちにとっては迷惑なイメージであると思います。

 そんな典型的な日本人のイメージとは程遠く、イランはアルコール禁止で、賭博禁止で、売春禁止で、女性は公衆の中でスカーフ(ヘジャーブと呼ばれるもの)から髪の毛が出てしまったら取り締まられる、などと禁止だらけの国だったりする。この原理主義的な禁欲主義を、表面的には貫いている。あくまで、公的な話なので、実態はどこまで厳格なのかは謎ですが、それでも外国人がアルコールを持ち込んだりしたら刑務所行きだとかは旅行中よく聞きました。実際に旅したところ、勿論危ないところには行ってませんが、街中のどこを見てもアルコールも酔っぱらいもいない。穏やかにタバコ吸ってお茶を飲んでる。おお、優雅だ。

 世の悪徳を排除した世界は天国か? 

 まさか。

 

 その日の「おまえもマリファナ吸えよ。」

 出会ってすぐにも関わらず、飯を何度も奢ってくれた奴。寝台特急に乗らないとな、と言ったら夜中1時にわざわざ車で送ってくれたこと。

 そういうのを含めると、本当にこういう誘いは辛い。運転をしながら右手を差し伸べる男は既に目がすわっていた。吸ったふりをして、へらへら笑って返した。

 寝台列車に乗る前に、甘ったるい匂いが強かったのでトイレで服を水に濡らして洗っているとき、突然、虚しい気持ちになった。何をしているんだか。

 こういうのがあるから、アジア的なウェットな世界というものはうんざりになる。知らず知らずにそういう人間関係を求めてしまう弱さがある。でも、ウェットな世界なんてものは、幼いころの思い出だけで十分な気もするのだ。

 

 

まとめ:イランでマリファナは吸わないようにしましょう。

 

 

 

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moto